社会になりはしないかと心配する人があるかもしれませんが、この郷土的な全体を綜合することによつて初めてよい社会が出来るのであります。総ての人、総ての地方が器械的に同様であつたならば、日本も実につまらぬ国であります。各地方の個性を認めて、その綜合をはかるところに国家としても真の意義を発揮することが出来るのであります。真の国粋主義は真の地方自治主義に基づかなくては成り立たないのであります。同時に真の国家主義は真の世界主義であります。真に豊な人間生活場としての世界をつくることこそ、真の国家主義であります。
 甲の国の文化と乙の国の文化とは違つてをります。その相互の対象によつて初めて相互の価値が生ずるのであります。私も欧洲諸国を旅行して来て初めて日本といふ国がわかりました。孤立してゐては何も分らないし、真の文化を作ることも出来ません。これは個人についても、一村一家についてもみな同じことであります。自分の村から出てみて初めて身分の村の地位、文化等がよく分るのであります。これは自分の姿が鏡をみることによつて初めて明かにわかるのと同じことであります。
 真の郷土精神の発展は真の国粋主義であり、真の国粋
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