農業がどうなるか――葡萄が出来るなら葡萄も作り、それから葡萄酒も作つて見たい。林檎が出来るなら林檎酒も作りたい。それから、鶏、豚、山羊、兎も飼つて見たい。出来るなら、もつと山奥へ這入つて人の捨てゝ行つた土地を耕してやり度いのである。しかし、それで生活も立てられまいから、文筆労働もやらなければなるまい。今日の資本主義のもとに事業をやらうと思へば、どうしても資本主義になるから、さう言ふことはやり度くない。自分の生活は出来るかぎり原始的な自給自足で労働をする。それは、一人ではいけないから、仲間があれば共にやり、それが私の社会運動になれば面白いと思ふのである。
 そこで斯う言ふ……現代社会思想を検討すると、ジヤン・ジヤツク・ルーソー以来、今日に至る迄自然生活に帰れと言ふ感想と生活とが、非常な勢ひをもつて近代人を動かしつゝあることに気がつく。ルーソーは自然に帰れと教へたが、ルーソーの思想はフランス大革命を起させたが、それは起させただけで、その思想を実現しないでわきへそれた。そこでその後に生れた社会主義の鼻祖と言はれるシヤルル・フーリエは更に一歩を進んで、土に帰れと教へた。イギリスの社会主義の父と
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