る。「私の経験では、小農者は地方住民中で最善、最優なるものである。私がこゝに小農者といふのは、四十エーカー以下の地を耕作する者を言ふ。(一エーカーは約四反歩)彼等は一般に多芸多能であつて、種々な仕事に変通自在で器用である。そして是れは、狭い場所にて一切を自分で処理せねばならない処から、その必要に迫られて器用にもなり、変通自在にもならしめられる為なのである。かうした人達は、農耕の外に牧畜や斬毛にも携はり、多少は鍛冶屋の仕事も出来る。自分で小屋の修繕もすれば、新らしく建てもする。(自作農の場合には)……若し其耕地が充分でない場合には外に出て労働もする。或は石屋の仕事もすれば、左官屋の仕事もする。此種の人達は多く技能に富み、仮令《たとへ》読み書きの方には不得意でも、或る意味に於て、善く教育された者と言ふことが出来る。」(カ翁著『自由産業の方へ』九九頁)更に言つてゐる。「大農制に於ては、大抵分業が過ぎる。例へば一人は牛方、一人は犁持、一人は馬力、といふ工合に種々に分業が行はれる。そして其結果として、彼等はその分業の溝の中にはまつて了ひ、その限界と活動とは制限される。……その結果として、彼等本来
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