社会的分業論
石川三四郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)悪《にく》んだものは
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)近代|仏蘭西《フランス》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)ダア※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ニズム
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)われ/\に
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
○ クロポトキンの反対
社会主義者、無政府主義者中にて、分業制度を最も悪《にく》んだものはピエール・クロポトキンであらう。エドワアド・カアペンタアの如きも、諸種の仕事を兼業する自作小農を以て社会の健全分子だとしてゐるが、クロポトキン程には分業制を排斥しなかつた。クロは多くの社会主義者がこの分業制を支持するのを見て「さしも社会に害毒ある、さしも個人に暴戻なる、さしも多くの悪弊の源泉たる此原則」と言つてゐる。分業は吾々を白き手と黒き手との階級に別[#「別」に「(ママ)」の注記]けた。土地の耕作者は機械に就ては何にも知らない。機械に働くものは農業に就て全然無知である。一生涯ピンの頭を切ることを仕事にする労働者もある。単なる機械補助者になつて、而も機械全体に就て何の考へも持たない。かくて彼等はそれによつて労働愛好心を破壊し、近代産業の初期に、吾々自身の誇りである機械を創造したところの発明能力を喪失した、とクロポトキンは言つてゐる。(チヤツプマン版『パンの略取』二四七頁―二四九頁)
更にクロポトキンは曰ふ。個人間に行はれた分業は国民間にも遂行されやうとした。分業の夢を追つて行つた経済学者や政治学者は、われ/\に教へて言つた。「ハンガリイやロシヤはその性質上からして工業国を養ふために穀物を作るべく運命づけられてをり、英国は世界市場に綿糸、鉄製品、及び石炭を供給すべく、ベルギイは毛織物を等々……加るに各国民の中に於ても各地方は各々自身の専業を持たなければならない。」併しながら「知識は人工的政治的の境界を無視する。産業上に於ても亦然りである。人類現下の形勢は、有り得べき凡ての工業を農業と共に歩一歩と各々の国内及び各地の地方に結び着けるにある。……われ/\は一時的
次へ
全12ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 三四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング