吾等の使命
石川三四郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)跫音《あしおと》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)声|札々《さつ/\》たり
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「財あれども商を行はず」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)札々《さつ/\》
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一
清い艶やかな蓮華草は、矢張り野の面に咲き蔽ふてこそ美しいのである。谷間に咲ける白百合の花は、塵埃の都市に移し植うべく、余りに勿体なくはないか。跫音《あしおと》稀なる山奥に春を歌ふ鶯の声を聞いて、誰か自然の歌の温かさを感じないで居られやう。然るに世の多くの人々が、此美しい野をも山をも棄てゝ、宛《さな》がら「飛んで火に入る夏の虫」の如く、喧騒、雑踏、我慾、争乱の都会に走り来たるのは何故であらうか。
二
支那太古の民、壤《つち》を撃ちながら歌つた「日出でゝ作り、日入つて息ひ、井を鑿《うがち》て飲み、田を耕して食ふ。帝力我に何かあらんや」と。「帝力我に何かあらんや」な
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