休む事をしない
僕等は高く どこまでも高く僕等を押し上げてゆかないではゐられない
伸びないでは
大きくなりきらないでは
深くなり通さないでは
――何といふ光だ 何といふ喜だ
[#天から27字下げ]大正二・一二
[#改ページ]
愛の嘆美
底の知れない肉体の慾は
あげ潮どきのおそろしいちから――
なほも燃え立つ汗ばんだ火に
火竜《サラマンドラ》はてんてんと躍る
ふりしきる雪は深夜に婚姻飛揚《ヴオル・ニユプシアル》の宴《うたげ》をあげ
寂寞《じやくまく》とした空中の歓喜をさけぶ
われらは世にも美しい力にくだかれ
このとき深密《じんみつ》のながれに身をひたして
いきり立つ薔薇《ばら》いろの靄《もや》に息づき
因陀羅網《いんだらもう》の珠玉《しゆぎよく》に照りかへして
われらのいのちを無尽に鋳る
冬に潜《ひそ》む揺籃の魔力と
冬にめぐむ下萌《したもえ》の生熱と――
すべての内に燃えるものは「時」の脈搏と共に脈うち
われらの全身に恍惚《こうこつ》の電流をひびかす
われらの皮膚はすさまじくめざめ
われらの内臓は生存の喜にのたうち
毛髪は蛍光《けいこう》を発し
指は独自の生命を得て五体
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