れは二列になっていて、雪がうしろへけってない。イタチのも二列。
 おもしろいのは人間の足あとで、ゴム靴でも、地下足袋《じかたび》でも、わらぐつでも、あるき方がひとりひとりちがうので、足あとをみると誰があるいたかたいていわかる。大またの人、小またの人、よたよたとあるく人、しゃんしゃんとあるく人、前のめりの人、そっている人、みなわかる。わたしの靴は十二文という大きさなので、これは村でもほかにないからすぐわかる。ゴム靴のうらのもようでもわかる。あるき方のうまい人や、まずい人があるが、雪の中では小またにこまかくあるく方がくたびれないといわれている。両足をよこにひらいてあるくのがいちばんくたびれるようだ。靴のかかとをまげる人のもくたびれそうだ。これはからだのまがっている人、内ぞうのどこかわるい人のだ。いちど、あまり大きな足あとがつづいているので、クマかと思っておどろいたら、「がんじき」というものをはいてあるいたあとだった。これは足が深く雪にもぐらないように、靴につけてはく道具である。「つまご」という大きなわらぐつも同じ役目をする。あまり深くてやわらかい雪の上は、立つと足がもぐるので、立ってあるか
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