ずに、雪の上をおよぐといいといってくれた人があるが、わたしにはできない。どうやっておよぐのかわからない。
わたしは雪の中をあるくのが好きだが、あるきながら、いろいろの光線で雪を見るとうつくしい。足がふかくもぐるからあるきにくく、くたびれるので、ときどき雪の中へ腰をうずめてやすむ。眼の前にどこまでもつづく雪の平面を見ると、雪が五色か七色にひかっている時がある。うしろから日光がさすと、きらきらして無数の雪のけっしょうがみな光線をはねかえし、スペクトルというもののようになる。虹いろにこまかく光るから実にきれいだ。野はらをひろく平らにうずめた雪にも、ちょうど沙漠のすなにできるようなさざなみができて、それがほんとの波のように見えるが、光線のうらおもてで、色がちがう。くらい方は青びかりがするし、あかるい方はうすいだいだい色にひかり、雪は白いものとばかり思っていると、こんなにいろいろ色があるのでびっくりする。
いちばんきれいなのは夜の雪である。夜でも雪はあかるいから、ほのぼのと何かが見える。そしていちめんに白くけむったようになってけしきが昼間とはたいへんちがってくる。ひろびろと奥ふかくみえて、ま
前へ
次へ
全10ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング