にすんでいて、夜になるとこのへんまで出てくる。キツネの足あとはイヌのとはちがう。イヌのは足あとが二列にならんでつづいているが、キツネのは一列につづいている。そしてうしろの方へ雪がけってある。つまり女の人がハイヒールのくつでうまくあるくように、一直線上をあるく。四本のあしだから、なかなかむずかしいだろうとおもうが、うまい。キツネはおしゃれだなあとおもう。じっさい夕日をあびてあるいているところを見ると、毛が金いろに光って、尾をながくなびかせ、腹の方は白いように見えてきれいである。いちど鳥のようなものをくわえて小屋のまえの畑をあるいていったのを見たが、キツネがあるくと、カラスがいればさわいで鳴くからじきわかる。キツネの口はなかなか力があって、この秋、ある家の山羊が死んだところ、夜の間にキツネがそれをくわえて持っていってしまったと、その家の人がはなしていた。
 ウサギや、キツネのほかに、イタチの足あと、ネズミの足あと、ネコの足あと、みんなちがう。ネズミの足あとなどは、まるでゆうびん切手のミシンの線のようにきれいにこまかく、てんてんてんてんとつづいて、さいごに小屋のえんの下のところへきている。こ
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