いっぴつけいじょうつかまつりそうろう》」とやっている。
スミレ、タンポポ、ツクシ、アザミの類は地面いちめんを被《おお》っているから、スミレのあのかわいい花を踏みつぶさないでは小径もあるけない。そういう草のわか葉の中にヌノバと土地の人がよんで好んでたべる草がある。大きくなると、学名を「ツリガネニンジン」という草で、このわか葉はうでてゴマやクルミであえるとうまい。つみとると切口から白い乳が出るのでチチグサともいっている。小川のへりには、トリカブトや、ベコノシタなどという毒草が青々と出ているので用心する。大へんうまそうに見える。植物学者白井光太郎博士はトリカブト毒研究で死なれたそうだが、この光太郎はなかなか気をつけて、毒草にうっかりやられたり、何とかいうフランス王のように毒キノコなどに派手にはひっかからないつもりでいる。
こんなことを書いているうちに季節はかけ足でやってくる。通りすがりの村の青年男女も目がさめたように水々しくなり、手製のスエターも軽そうだ。もうどこを見ても花のないところはなく、幾種類かのヤナギ、ドングリ科のいろいろの花、それにはまことに奇抜な形のが多く、山の中でめいめい一
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