な粒があり、長いのや短いのがある。穂の種類によるらしいが、ともかくそのむっとするような、母のふところの匂のような、あまいような、香ばしいような芳香の中を歩くのがたのしかった。部落を出はずれて林のかげの自分の小屋の方に近づくと、いつのまにか稲穂の香りの人間らしさは消えて、今度は秋の山々からりょうりょうと吹いてくるオゾンに富んだ微風の新鮮無比な、宇宙的感覚のようなものが胸一ぱいに満ちるのであった。(秋の味覚のリンゴのことは又別に書く。)



底本:「昭和文学全集第4巻」小学館
   1989(平成元)年4月1日初版第1刷発行
底本の親本:「高村光太郎全集第10巻」筑摩書房
   1958(昭和33)年3月10日初版第1刷発行
入力:kompass
校正:門田裕志
2006年11月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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