新疆所感
日野強
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+黨」、第4水準2−88−84]
−−
予が嘉峪関をこえて新疆を横断し、カラコルム山脈を超越しおわりしまでに費したる日数、約三百日、その間親しく天山山脈に沿う高原を視察し、タリム河に瀕する平野を踏査して、耳聞目睹したる結果は、五十八万方マイルの大宝庫、古来蛮雲のとざす所となりて、空しく草莱(そうらい)に委し、二百万の生霊、なお瘴烟(しょうえん)の裡に包まれて、いたずらに混沌として睡眠するの憐むべき情態にあると同時に、新疆の運命すこぶる悲観すべきものあるに想到し、うたた感慨に堪えざるなり。請う少しくその理由を説かん。
おもうに新疆の命脈は、一にイリによりて繋がれ、イリは実に新疆の胴腹にさしたる一楔木にしてその死活を左右す、この楔木一たび他国の握る所となり、もって深く新疆の臓腑をえぐらば、新疆あに全きをえんや。清廷が特に将軍をイリに駐紮せしめて、辺防に任ぜしむるゆえんのものは
次へ
全10ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
日野 強 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング