でに確立せば境界線をゴビ地方に推進すること、容易なるべく、かくの如くして始めて枕を高うして安眠するを得べければなり云々。
[#ここで字下げ終わり]
これ明らかに露国の野心を暴露して、遺憾なきものにあらずや。もしそれタシケント、トムスク鉄道にして、完成せらるるの暁にいたらば、これすなわちイリの側面を近く脅威せられたるに等しくイリは漸次に露国の侵蝕をこうむるべきは、ほとんど疑いをいれず。いわんやイリ地方は、露領セミレチエンスカヤ州と、イリ河の河盂(かう)によりて連接し露国よりの侵入容易なること、なお黒龍江河盂に沿える満洲に異ならざるにおいてをや。イリの運命あにひとり第二の満洲たらざるを得んや。さらに翻って兵略上より観察せんに、露国もしその首力をイリに進めて新疆を中断し、一支隊をタルバガタイに送りて、西湖を占領し、更に一支隊をザイサン湖方面より出して故城に進め、別働隊をカシガル方向より送り、南北相呼応して新疆を蹂躙(じゅうりん)する有らば、その結果はたして何ぞや。ことに新疆全土の戍兵わずかに六千を越えず、しかも脆弱(ぜいじゃく)恃むにたらず。想うてこれにいたれば、吾人は新疆の運命に関して、
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