、冷遇される旧態は改善されていない。職階制をきめる場合なども、調査系統については、きわめて認識と理解とがたりない。行政系統は、次官、局長、部長、課長、係長というように既成のハイアラーキイ秩序ができているので、わかりやすいらしいが、調査系統となるとこれがはっきりしない。そこで、つい傍系視されてしまう。形式的には民主化が唱えられているけれども、実質はあまり改革されていないようだ。公平待遇の原則が貫徹されないで、どこに民主化があろうか。こんな環境の中では、調査マンのうちで小悧巧なものは、課長や部長のコースを通って局長以上の地位に上がりたがる。終生を捧げて研究調査に没頭しようとすれば、いつも割損な地位に甘んじなければならぬ。これでは、底光りのする立派な専門家は養成されるはずがない。青年時代の社会的熱情はうせ、研究心は鈍り、人間的にも光りのあせた存在と化してしまう者が多いのは、当人の罪よりもむしろ環境の罪であろう。
このような環境の中に成長する調査マンの心理は複雑だ。この心理をのみこんで使いこなせる指導者はきわめて稀である。TVAにおけるリリエンソールのような人物は、容易に得難いのである。はじ
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