めの純真な勉強ずきの青年たちを、みな不平家にして殺してしまう。調査マンをして単なる調査職人に終わらしめず、立派な社会人として成長するような環境ができ上ることを祈ってやまない。例えば、海外駐在のサイエンティフィック・アタッシェ制度のようなものを創立するだけでも、どれだけ明るい希望を与えることであろうか。
わが国には過去において、優秀な青年学徒をして専門家たることを断念せしめた数多くの実例がある。それは、右に述べた社会的、経済的待遇の不公平が大きな原因であるが、そのほかにも内面的な問題がある。大学以外の職場で良心的な研究を続けることは容易でない。研究の方向や結論が与えられて、注文生産的研究調査を強いられることが多い。研究調査に自主性をもつことができず、迎合的な研究やその場限りのごまかし的調査をせねばならないとしたら、男一匹一生をかけるほどの熱情がもてないのは当然である。ここに青年調査マンの最大の精神的煩悶がある。そこで、このような生活に見きりをつけて、適当なチャンスに官界や実業界や新聞社などへ転身した悧巧者は少なくない。学力を認められて大学へ迎えられた者もある。専門家として大成すべき素質
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