ツ)の実験も考えたのであった。

[#ここから1字下げ]
『十分間の思索』………責任構成 中井正一
           撮影   安藤春蔵
『海の詩』………………責任構成 辻部政太郎
           撮影   安藤春蔵
           色彩音楽 内藤耕次郎
           音楽   貴志康一
[#ここで字下げ終わり]
 以上のような計画で、昭和六年の暮ごろから、すべての実験を試みたのであった。
 魚眼レンズとその映像をダブるべく、シャボン玉の色彩像を撮ろうとして、幾晩か徹夜したが、その結果がついに失敗に帰した時なぞ、みなのショゲかたは可愛想なほどであった。しかし魚眼レンズをラグビーのスクラムの中につっこんで撮ったりして、初めて動く魚眼の映画像を見た時は、これまでの苦労も消しとぶほどの興奮をみなに与えたのであった。
 色彩フィルムの現像が簡単な枠の手廻しであるために、最後まで微かに色が呼吸をするのを、どうしてもとり去ることができなかったのも、私たちだけにわかる苦しみであった。ちょうどそのころ、アメリカの色彩映画『丘の一本松』が輸入された、大体、あの映画の水準に私たちの
前へ 次へ
全5ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング