りをもってきたのである。
例えば『暁の電撃戦』“The Western Approaches”において、基調は大西洋の海の青さであり、その空にひろがる雲は、それのヴァリエーションであった。その中に、繰り返し、繰り返し出てきた、ボートの帆の赤さは、そのリフレインの主題の役目をもっていたのである。
あの映画の中で、なお一つ注意すべきは、全シナリオを通じて、それが赤い色であることをもってのみ、この筋をひきしめ、その赤さは、人々をして、目にしみ入るほどの強い印象をあたえた一つの赤い色があった。
それは、シナリオ・ライターが、胸にかくしもって、それが金筋のハイライトの役割りをもつものであった。それは、ほんの二点の灯にしかすぎなかったが、小さな消えつつある電池によって点じている電信機に灯っていた「赤い色」であった。その赤い火が灯っているかぎり、ボートの乗組員の位置が大西洋を航行しているいずれかの船に、S・O・Sのモールス信号を伝えうるのである。
しかも、その「赤い色」は、そのキーをうつ者だけに見える小さな灯なのである。全乗組員は、ひそかに、心の中で、その赤い灯が消えはしないかと、怖れている
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