図書館法を地方の万人の手に
中井正一

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【テキスト中に現れる記号について】

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 三年前のことであった。
 戦い敗れ、青年の魂の表皮には、まだ生ま生ましい傷痕が赤い肌をあらわにしているときであった。
 広島県の田島の青年が、突然、私の家にやって来た。リュックサックから、数十冊の本をものもいわずに引き出して、
「先生、今、大阪から、こんな良い本を、これだけ買ってきました」
 昂然と、私に一つ一つの本を示しつつ、その表紙を、撫ぜんばかりに示すのであった。
 その一つ一つの本を、何人の青年が、そのきらめく瞳で、驚きと、疑問の表情で取り組むかを想像しながら、私は、何となく、頭を下げる思いであった。
 彼は、また一つ一つの本を大切にリュックサックにしまって、再び、昂然と、田島に向かって、という足どりで、私の家を去った。
 私は、何かやるせないような心持ちで、ひとり残ったのである。
 実に、終戦直後の田舎の街では、良書
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