図書館法ついに通過せり
中井正一
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【テキスト中に現れる記号について】
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(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+喜」、第3水準1−15−18]
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この数年間、わが図書館界は、この法のために、実に多くの討論をし、実に多くの交渉をし、海を越え山を越えて、ここに辿り来ったのである。
勿論われわれは、未だ多くの夢をもっている。しかし、かかるかたちにおいて、一つの橋頭堡を、われらの永い文化の闘いにおいて、かちえたことは、現段階の酷薄な情勢のなかにあっては、一つの前進であり、記念すべき、勝利への第一歩であるというべきである。
法案通過のためにたたかった諸兄と共に深い感慨をもって、お互いに手を握りあいたい。
しかし、法が示すように、財政的措置としては、私達の力をもって、運動を貫いて立ち上るほかない。この法は、その運動を全面的に展開せよとの最初の狼火の役割をもっているのである。
法案が通過したその最初の瞬間こそが最も大切な時である。すべての図書館の関係者は外部に向って、その旨をつげ、その法のもつ遠い任務を説き、文化運動として、全文化大衆に向って、即刻行動を起すべきである。
一つの町が起ちあがれば、次の村もじっとしてはいられないのである。燎原の火の如く、それは次次に点火されなければならない。一つの郡が他の郡を競争の中に巻き込まなくてはならない。そして、一つの県が災害から立ちあがることで、他の県をも呼び込まなければならない。
館友は、ともに援けて、救援におもむき、呼応しなければならない。そして、法の不備は、館友自体の努力をもって覆いかくさなければならない。この努力が、その成不成にかかわらず、この法自身をより完きものとする次の法制定のきっかけとなり、力となるのである。
われらは、この瞬間に決して、法の内容の批判に立止ってはならない。われわれが前進することによって、法もまた、おのずから進んでゆくのである。
遠い遠い前進の第一歩を今日私達は踏みしだいているのである。
われらは、また立止って人々に援助を哀願してはならない。文化運動の見えざる集積をつみかさねて、零細な同情と協力を一つ一つ結集して、一つの大きな力として固め、そして、それを図書館法の精神に集
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