めなければならない。そしてそれが、おのずから予算の上ににじみ出て、青年、少年が、図書館の新たな動きの中に※[#「口+喜」、第3水準1−15−18]々として飛び込んで来るようにしなければならない。
 法の通過は、今、私達に安堵をあたえたというよりも、多くの心躍る不安をもたらせている。図書館協会の半世紀の歴史の中で、最も大いなる転回期と、歴史的な最も重い責務の時に直面しているのである。
 この時に関東も関西も打って一丸として、公共図書館も学校図書館も固く手を握って、この画期的な曲り角に、その腰を沈めよう。
 敗戦の四年、物質方面の多少の恢復にもかかわらず、精神方面の傷の深さは、むしろその口をひろげつつある。
 読書力の減退を見よ、青少年の知的飢渇を見よ、出版界の崩壊現象を見よ。一つとして、図書館界の手をさしのべなければ、危機がその「死の十字」の様相を示さんとしていないものはない。
 戦いのさ中に嘆いたように、今正に、私達は嘆かなければならない。
 戦いのさ中よりも、今、その危機はむしろ深まりつつある。そして、図書館法は、私達に、それを救うべき最初の狼火となって、今ここにその焔をあげたのである。



底本:「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」てんびん社
   1972(昭和47)年11月20日第1刷発行
   1976(昭和51)年3月20日第2刷発行
初出:「図書館雑誌」
   1950(昭和25)年4月
入力:鈴木厚司
校正:染川隆俊
2008年1月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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