こととなったわけである。そして、国会だけでなく、行政及び司法部の各部門にも、支部図書館を置き、横の連絡を保ちつつ、総合的機能を発揮せしめんとするのである。更に一般の国民に対しても公開し、全国の図書館とも連絡して、最大限の奉仕を任務としているのである。

 かかる図書館機能の出現は我国有史以来初めてであり、人々はこれに協力するというよりも、唖然として傍観者となる傾向がないではないのである。立上りの時として、無理もないかもしれないが、また関係者として、今ほど人々の協力を求めているときはないのである。

 民主化への寄与

「真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として」の言葉をもって我が国立国会図書館法はその劈頭を飾っている。この使命は雄大でもあるが、現に今、これほど切実であり、現実的な願いはないのである。しかも、この願いを実現するにあたって、この国立国会図書館ほど、組織として、直接役立ち、そのために、その完成の急をまたれるものはないのである。
 法律は人民が、人民自身にあって、人民自身のために作られるのであるという簡単なことが、まだ仲々日本全体にわかっていないのである。各地方にあって多くの指導者は幾年か、口を酸くしてこれを説きつづけなくてはならないであろう。
 しかし、中央でこの法律を、国会自身が、したがって、人民自身が作るんだということを、具体的に組織と資料と建築物とその運用でもって、確かに人々に見せることも、この使命を自覚さすに重要なことなのである。

 この組織はまず国会に対しては国会が法律をつくるとき、その求めに応じて、色々の調査をしたり、委員会に向って進言したり、決定に必要な根拠を提供したりする。そのためには、人民の集めたものとして、日本の何処にあるよりも広く、また正確な資料を、常に集めかつ整理して置かなくてはならない。そのために幾百人の人が間断なく、その観点から、日本の過去から現在に至るまでの状態を調査しつづけていなければならなくなるのである。
 更にこの図書館は、行政各省及び司法部の各部門に対して、支部図書館を置き、横の連絡を図り、いかなる職員もお互いに完全に各機関を利用できるようにして、その全機能を発揮せしめるようにしなければならないのである。そして、また一般国民に対しては、自らのみならず
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