国会図書館のこのごろ
中井正一

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]*『朝日評論』一九五〇年十一月号
−−

 立ちあがりのときは、どうなることかと思っていたが、二年半もたってみれば、どうやら一つのコースに乗ってきたようである。
 上野図書館を支部図書館とすることになって、働いている人が約五百人、二十五の各支部図書館と本館を合わせると三百七十万冊の本が管理下に入ることとなったのである。
 支部図書館のうちでも、静嘉堂と東洋文庫は世界的な東洋関係の書籍をもっているし、内閣文庫、宮内庁図書館、上野図書館は、有数の日本古書の蔵書庫である。だからこの三百七十万冊は、名実ともに日本最高の目録構造といえるのである。
 外国書は昔のように自由には買えぬが、わが館はスミソニヤン・ソサイエティーの国際交換組織を通して、一九四八年度は二十五万点を、一九四九年度は三十六万点を受け入れた。ユネスコはこれに関連して、日本の国際交換のインフォーメーション・センターとしてわが国会図書館を指定したので、内外学界、図書館の国際的交渉の斡旋をおこなうことになった。
 一方、議会の立法資料として、調査立法考査局は、これまで六百件余の奉仕をしており、刊行した調査資料は百余冊にのぼっているが、これには六十人ばかりの人々が携わっており、その中には牧野英一先生のような大学者から新進気鋭の学徒まで含まれている。今秋は法律図書館を開設し、支部の最高裁判所図書館、法務府図書館や東大と並んで一大法律図書館網の完成へ一歩を進めようとしている。
 支部図書館の組織は、アメリカの議会図書館にもまだみられない世界独特の組織であるが、これは各省と司法の各図書館を支部図書館とすることになって、共通のユニオン・カタローグをつくり、三百七十万冊の本をお互いの共通のものとする目的をもっているのである。各省の調査機構ではさかんにこれを利用し、今まで、すでに二十万の人が四十万の本を動かしており、調査件数も二万近くになっている。このユニオン・カタローグは五年計画ではじめ、いま二年目になった。
 国内の全図書館に対しては、二十五ヵ年計画でもって、ユニオン・カタローグを完成させる計画である。これができあがると、日本全体の図書館のカードが国会図書館に集まる。有力大学の
次へ
全3ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング