巨像を彫るもの
中井正一

 これまで、誰でも図書館とは、寂かな、がらんとした庫のようなシーンとした、け押されるような感じのところとなっていたのである。そこには古い本があればあるほど、威張れたのである。また、その量が十万冊、百万冊と多ければ多いほど、また誇りとされたのである。そして、それは人を威圧するような円天井があって、学問の尊厳があたりを払うようなこころもちが、どうしても欠くことのできない条件となっていたのである。大英博物館の図書館、ローマのヴァチカンの図書館はその宮殿の威厳をもってあたりを払っているのである。すると、それに右にならってアメリカの国会図書館ですら、その旧館は、わざわざ円天井を造って、その下に申し合わせたように、カード箱を置いているのである。
 ちょうどこれは、図書館が、これまで東洋でお経堂にはじまるように、教会の教義を書いた図書館が、その始めのすがたを中世紀に見せたことによったに違いない。中世紀の図書館には、その本がなくならないために、本を鎖でつないであって、鎖の図書館チェーン・ライブラリーなるものがあったのである。
 しかるに、二十世紀に入って、町人が大いに威張り
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