題は図書館の概念が、「スペース」に止まっている所と、もはや既に「機能」としての働きの考え方に移っている所との間、その根柢的構成の差異にあったのである。そのことは現代の現実の生活を支えている機構そのものが「場所的」考え方に止まることができずして、「機能的」すなわち、働きとしての考え方に移らなければ、組織自体が立ちゆかないことを示しているかのようである。
そこでは、スペースよりもより早く、ユニオンカタローグが、印刷カードが図書館組織として要求されはじめている。現実は恰も、蚕が蛹となり、更に繭となるように、「形態《モルフェ》」として自己自らを「変貌《メタモルフォーゼ》」する如く、吾々の生活自体が、歴史の中に一つの必然の変革を自ら験しつつあるかのようである。
組織が変れば吾々の心構えも変ってゆかざるを得ない。静かに精密な機械が油で美しく磨かれて音もなく動いているように、新たなる精神がそこに芽生え、新たなる美しさと喜びがそこに誕生しつつあるかのようである。
或る人々はそこに嘔吐を感ずるかもしれない機構の中に、敢えて未来の美しさを嗅ぎ出そうとする一つの挑戦が、そこでは試みられているのである。
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