絵画の不安
中井正一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)露《あら》わな

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)調和[#「調和」に傍点]に対する

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔Ra:umlich−in−Sein〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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 真に在るものは不安の上にある、というハイデッガーの考えかたには何ものか深いものがある。存在して、しかも存在のさながらの姿より隔てられているという嘆き。存在のふるさとに還りたきのぞみ。それがわれわれの「今」であり、「ここ」であり、「自分」の露《あら》わな現《うつ》つである、と彼はいう。
 その意味で、真の自分の姿は永遠なる「問い」の上にある。
 言葉の上に、光の上に、音の上に、人は問いを、問いの上にまた問いを重ねる。それは真に在りたい深いねがいである。
 われわれが存在の中に在りながら、画布をもってそれを隔て、それに寂《しず》かに立ち向うのは、在るものが
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