ンチノミー的構造を見透す重き歩みでもある。それを人々は弁証法とよんでいる。歴史性とよんでいる。私たちの未来のリズムの内面にはかかる集団的問いへの喘ぎが潜んでいるといわなければならない。
自由通商的個人主義では盛りきれない組織性がすでに時をしっかり掴んでいることを私たちは一瞥にして知ることができる。そしてその喘ぎ[#「喘ぎ」に傍点]と脈搏[#「脈搏」に傍点]と歩み[#「歩み」に傍点]がいかに重く、その潮の干満の浪足がいかに苦しいかを知っている。それらのものが私たちのリズムに向って喚びかける時にその情趣は、まったくそれはトーキー的である、あるいは一般に真空管的でもある。
かくて、リズムをテンポとして、換言すれば歴史的形態の構造を背景として、それへの一瞥をもってする見透し Durchsicht として解釈することは、私たちの今のリズムへの理論的検討として見のがしがたき一つの任務であることを自分は信ずる。そしてかかる見透しのもとに、リズムの原始形態であるすべての自然的肉体的にあらわるる反復現象は常に新たなる風景として、現象として、仮象存在《パラエクジステンツ》の中にもたらされつつあるのを知
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