「見ること」の意味
中井正一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)現《うつつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うつす[#「うつす」に傍点]
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 見るということは、光の物理作用と、眼の知覚作用の総合作用だと誰でも考えているし、またそれにちがいはない。素朴的にいわば客観を主観にうつしとる作用だという考えかたである。しかし、このうつすということも、考えだせばかぎりもない複雑なことを含んでいるのである。「うつす」という言葉には大体、映す、移す、といったように、一つの場所にあるものを、ほかの場所に移動しまたは射影して、しかも両者が等値的な関連をもっていることを指すのである。
 等値的関連をもっている意味では連続的であるが、二つの場所にそれが離れる意味では非連続的である。うつすということの底にはすでに、この連続と非連続の問題も深く横たわっているのである。したがって、見ることも、本質的に考えると、うつすことの行為の意味で、この間題の上に成立しているのである。
 見るということも何でもないようだが、理屈をつけてみれば、とんでもないむつか
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