謔チて、節約並びに資本の蓄積に対して刺戟を与えるから、一国にとり極めて有利ではあるが、輸入貨物がそれに労働の労賃が費される種類のものでない限り、資本の利潤を引上げる傾向を有たないであろう。
外国貿易についてなされた叙述は内国商業にも同様に妥当する。利潤率は、労働のより[#「より」に傍点]良き分配により、機械の発明により、道路及び運河の建設により、または財貨の製造か運搬かにおける労働を節約する手段によっては、決して増加されない。これらのものは価格に作用を及ぼす原因ではあり、そして必ずや消費者に極めて有利なものである、けだしそれは彼らをして、同一の労働をもって、または同一の労働の生産物の価値をもって、それに改良が加えられた貨物のより[#「より」に傍点]大なる分量を交換して取得し得せしめるからである。しかしそれは利潤に対しては何らの影響も及ぼさない。他方において、労働の労賃のあらゆる減少は利潤を高めるが、しかし貨物の価格に対しては何らの影響をも生み出さない。一方はすべての階級にとり有利であるが、それはすべての階級は消費者であるからである。他方は生産者にとり有利であるのみである。彼らはより[#「より」に傍点]多く利得する、しかしあらゆる物は引続きその以前の価格にあるのである。第一の場合においては彼らは以前と同じものを得る、しかしそれに彼らの利得が費されるあらゆる物は、交換価値において減少しているのである。
(四七)一国における貨物の相対価値を左右すると同一の規則は、二つまたはそれ以上の国の間に交換される貨物の相対価値を左右しはしない。
完全な自由貿易の制度の下においては、各国は当然にその資本及び労働を各々にとり最も有利な職業に向ける。この個人的利益の追求は全体の普遍的幸福と驚嘆すべきほどに結びついている。勤労を刺戟し、器用さに報酬を与え、かつ自然の与える力を最も有効に使用することによって、それは最も有効にかつ最も経済的に労働を分配し、他方、生産物総量を増加することによって、それは一般的便益を公布し、そして利益と交通という一つの共通の紐帯によって、文明世界を通じて諸国民の普遍的社会を結成する。葡萄酒はフランス及びポルトガルにおいて造らるべく、穀物はアメリカ及びポウランドにおいて栽培さるべく、かつ金物その他の財貨は英国において製造せらるべきである、ということを決定する所のものは、この原理である。
同一国内においては、利潤は、一般的に言えば、常に同一の水準にあり、または資本の用途の安固と快適との大小に従って異るのみである。異れる国の間ではそうではない。
もしヨオクシアにおいて用いられている資本の利潤が、ロンドンにおいて用いられている資本のそれを超過するならば、資本は急速にロンドンからヨオクシアに移動し、そして利潤の平等が達せられるであろう。しかしもし資本及び人口の増加によって英国の土地における生産率の減少せる結果、労賃が騰貴しそして利潤が下落しても、資本及び人口が必然的に英国から、利潤のより[#「より」に傍点]高いオランダやスペインやロシアへ移動するということには、ならないであろう。
もしポルトガルが他国と何らの商業関係をも有たないならば、この国は、その資本及び勤労の大部分を、葡萄酒――それをもってこの国は他国の毛織布や金物を自国自身の使用のために購買するのであるが、――の生産に用いずに、その資本の一部をかかる貨物のの製造に向けざるを得ないであろうが、かくてこの国はおそらく質並びに量において劣れるものを取得することになろう。
この国が英国の毛織布と交換に与えるであろう葡萄酒の分量は、もし双方の貨物が英国において製造されるかまたは双方がポルトガルにおいて製造される場合の、その各々の生産に投ぜられる労働の各分量によっては、決定されない。
英国は、毛織布を生産するに一年間に一〇〇名の人間の労働を必要とする状態にあるであろう。そしてもしこの国が葡萄酒を造ろうと企てるならば、同一期間に一二〇名の人間の労働を必要とするであろう。英国は従って、葡萄酒を輸入し、そしてそれを毛織布の輸出によって購買するのが、その利益であることを見出すであろう。
ポルトガルにおいて葡萄酒を生産するには一年間に単に八〇名の労働を必要とするのに過ぎぬであろうし、また同一国において毛織布を生産するには、同一期間に九〇名の労働を必要とするであろう。従ってこの国にとっては、毛織布と交換に、葡萄酒を輸出するのが有利であろう。ポルトガルが輸入する貨物が、英国におけるよりそこでより[#「より」に傍点]少い労働をもって生産され得るにもかかわらず、この交換はなお行われるであろう。この国が九〇名の労働をもって毛織布を製造し得ても、この国はそれを生産するに一〇〇名の労働を必要とする国から、それを輸入するであろう、けだしこの国にとって、その資本の一部分を葡萄の栽培から毛織布の製造に移すことによって生産し得るよりもより[#「より」に傍点]多くの毛織布を英国から取得するであろうところの、葡萄酒の生産に、その資本を用いる方が、むしろ有利であるからである。
かくて英国は、八〇名の労働の生産物に対して、一〇〇名の労働の生産物を与えるであろう。かかる交換は同一国の個人の間では起り得ないであろう。一〇〇名の英国人の労働は、八〇名の英国人のそれに対して与えられ得ない、しかし一〇〇名の英国人の労働の生産物は、八〇名のポルトガル人の、六〇名のロシア人の、または一二〇名の東印度人の労働の生産物に対して、与えられ得よう。一国と多くの国との間のこの点に関する相違は、資本がより[#「より」に傍点]有利な職業を求めて一国から他国に移動する困難と、同一国において資本が常に一つの地方から他の地方に移る敏速さとを考慮すれば、容易に説明されるのである(註)。
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(註)しからば、機械及び技術に極めて著しい便益を有し、従ってその隣国よりも極めてより[#「より」に傍点]少い労働をもって貨物を製造し得る国は、たとえその土地がより[#「より」に傍点]肥沃であり、そしてそこから穀物を輸入する国におけるよりも、より[#「より」に傍点]少い労働をもって穀物が栽培され得るとしても、その消費のために必要とされる穀物の一部分を製造貨物と引換に輸入するであろう。二名の人が共に靴と帽子とを造ることが出来、そして一方はこの両職業において他方に優越しているとし、ただし帽子を造る上では、彼はその競争者に単に五分の一すなわち二〇%優れているに過ぎず、そして靴を造る上では、彼は競争者に三三%優れているとする、――優越せる人はもっぱら靴の製造に従事し、そして劣れる人は帽子の製造に従事するというのが、双方の利益ではないであろうか?
[#ここで字下げ終わり]
英国の資本家と両国の消費者にとっては、かかる事情の下においては、葡萄酒と毛織布との双方がポルトガルにおいて造られ、従って毛織布の製造に用いられている英国の資本と労働とがその目的のためにポルトガルへ移されるのが、疑いもなく有利であろう。その場合には、これらの貨物の相対価値は、一方がヨオクシアの産物であり他方がロンドンの産物である場合と、同一の原理によって左右されるであろう。そしてあらゆる他の場合において、もし資本が最も有利に用いられ得る国へ自由に流入するならば、利潤率の差違はあり得ず、また貨物が売却されるべき種々なる市場へそれを運搬するに必要な労働量の附加以外の、貨物の真実価格すなわち労働価格の差違はあり得ないであろう。
しかしながら経験は、その所有者の直接的統制下にない時の資本の想像上のまたは真実の不安固と、並びにあらゆる人が自ら生れかつ諸関係を有っている国を棄てて彼れの固定せる習慣の一切を持ちながら異る政府と新しい法律とに身を委ねることを嫌う自然的性情は、資本の移出を妨げるものであることを、示している。かかる感情は、私はそれが弱められるのは遺憾なことと思うが大部分の財産家をして、外国民の間で彼らの富に対するより[#「より」に傍点]有利な用途を求めるよりもむしろ、自国内で低い利潤率に満足せしめるのである。
(四八)金と銀は流通の一般的媒介物に選ばれているから、それらは商業上の競争によって、もしかかる金属が存在せずかつ諸国間の貿易が純粋に物々交換である場合に発生すべき自然的交易に適応する如き比例において、世界の種々なる国々の間に分配されている。
かくて毛織布は、ポルトガルにおいてはその輸出国において値するよりもより[#「より」に傍点]多くの金に対して売れない限り、ポルトガルに輸入され得ない。そして葡萄酒は、英国においてはそれがポルトガルにおいて値するよりもより[#「より」に傍点]多くに対して売れない限り、英国には輸入され得ない。もし貿易が純粋に物々交換であるならば、英国が葡萄を栽培するよりも毛織布を製造することによって、一定量の労働をもってより[#「より」に傍点]大なる分量の葡萄酒を取得するほどに毛織布を低廉に製造し得る間だけ、そしてまたポルトガルの産業が反対の結果を伴う間だけ、それは継続し得るであろう。さて英国が葡萄酒製造の一行程を発見し、そのためにそれを輸入するよりもそれを造った方がその利益となったと仮定しよう。この国は当然その資本の一部分を外国貿易から内国商業に移すであろう。この国は輸出のための毛織布の製造を止め、自ら葡萄酒を造るであろう。これらの貨物の貨幣価格はこれにつれて左右されるであろう。我国においては葡萄酒は下落するであろうが、毛織布はその以前の価格に止っているであろうし、またポルトガルにおいてはいずれの貨物の価格にも何らの変動も起らないであろう。毛織布は引続きある時期の間我国から輸出されるであろうが、それはけだしその価格が、我国よりもポルトガルにおいて引続きより[#「より」に傍点]高いからである。しかし葡萄酒の代りに貨幣がそれと交換に与えられついに我国における貨幣の蓄積と外国におけるその減少とが、両国における毛織布の相対価値に影響を及ぼし、ためにその輸出がもはや有利ではなくなるに至るであろう。もしも葡萄酒製造上の改良が極めて重要なる種類のものであるならば、両国にとり職業を交換することが有利となり、英国にとっては両国が消費するすべての葡萄酒を、ポルトガルにとっては両国が消費するすべての毛織布を、製造することが有利となるであろう。しかしこのことは、英国においては毛織布の価格を引上げポルトガルにおいてはそれを引下げるべき貴金属の新たな分配、によってのみなされるであろう。葡萄酒の相対価格はその製造上の改良から起る真実の利益の結果として英国において下落するであろう。換言すればその自然価格は下落するであろう。毛織布の相対価格は貨幣の蓄積により英国において騰貴するであろう。
かくて、英国における葡萄酒製造の改良の前に、葡萄酒の価格が我国において一樽につき五〇|磅《ポンド》であり、そして一定分量の毛織布の価格が四五|磅《ポンド》であり、他方ポルトガルにおいては、同一量の葡萄酒の価格は四五|磅《ポンド》であり、そして同一量の毛織布のそれは五〇|磅《ポンド》であると仮定すれば、葡萄酒は五|磅《ポンド》の利潤をもってポルトガルから輸出され、そして毛織布は同一額の利潤をもって英国から輸出されるであろう。
(四九)改良の後に、葡萄酒は英国において四五|磅《ポンド》に下落し、毛織布は引続き同一の価格にあると仮定せよ。商業におけるあらゆる取引は独立の取引である。一商人が英国において毛織布を四五|磅《ポンド》で買いかつポルトガルにおいてそれを通常の利潤をもって売ることが出来る間は、彼れは引続き英国からそれを輸出するであろう。彼れの営業は単に、英国の毛織布を購買し、そして彼がポルトガルの貨幣をもって買入れる為替手形でそれに対し支払をなすことである。彼れの取引は疑いもなく、彼がそれによってこの手形を取得し得る条件によって左右されるが、しかしその条件はその時彼に判
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