「より」に傍点]肥沃な土地においては生産費は増加しないであろうから、生産費を越す価格の超過、または換言すれば地代は、資本、人口及び需要の大きな減少によって妨げられない限り、土地の肥沃度の減少と共に騰貴しなければならぬことは、明かである。かくてマルサス氏の命題が正しいとは思われない。すなわち地代は土地の肥沃度の増減と共に、直接的にかつ必然的に騰落するものではなく、その肥沃度の増加がそれをして、ある将来の時において、増加せる地代を支払い得せしめるに過ぎない。ほとんど肥沃度のない土地は決して何らの地代をも生じ得ない。適度の肥沃度を有つ土地は人口が増加するにつれて適度の地代をまた大なる肥沃度を有つ土地は高い地代を生ぜしめられ得よう。しかし高い地代を生じ得るということと実際にそれを支払うということとは、別物である。土地が適度の収穫を産出するよりも、土地が極めて肥沃な国における方が、地代がより[#「より」に傍点]低いこともあろう、けだし地代は絶対的肥沃度よりはむしろ相対的肥沃度に、――生産物の豊富よりはむしろその価値に、――比例するからである(註二)。
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(註一)私は、穀物の生産にいかなる難易があろうとも、労賃と利潤との合計は同一の価値を有つということを説明せんと努めた。労賃が騰貴する時にはそれは常に利潤を犠牲にしてであり、またそれが下落する時には利潤は常に騰貴するのである。
(註二)マルサス氏は、最近の著作において、この章句で私が彼を誤解しているが、けだし彼は、地代は土地の肥沃度の増減と共に直接的にかつ必然的に騰落すると、言おうとはしているのでないから、と述べている。もしそうならば、私は確かに彼を誤解していた。マルサス氏の言葉は次の如くである、『この豊饒を減少し、土壌の肥沃度を減少せよ、しからばこの超過(地代)は減少するであろう。それを更に減少せよ、しからばそれは消失するであろう。』マルサス氏はその命題を条件的には述べず、絶対的に述べている。私は、土壌の肥沃度の減少は地代の増加と両立し得ない、と彼が主張しているように私に理解される所に、反対したのである。
[#ここで字下げ終わり]
 マルサス氏は、自然的また必然的独占物と呼ばれ得る土地の、特殊の生産物を産出する土地に対する地代は、生活の必要品を産出する土地の地代を、左右するものとは本質的に異る原理によって左右される、と想像している。彼は高い地代の原因たるものは、前者にあってはその生産物の稀少性であるが、しかし同一の結果を生み出すものは、後者にあってはその豊饒性である、と考えているのである。
 この区別はその根拠が十分であるとは、私には思われない。けだし、もし同時にこの特殊貨物に対する需要が増加するならば、その生産物の分量を増加することによって、穀物地の地代と同様に、稀少な葡萄酒を産出する土地の地代も、確かに増加され、そして同様な需要の増加がなければ、穀物の豊富な供給は、穀物地の地代を引上げずしてかえって下落せしめるであろうからである。地質がどうであろうとも、高い地代は生産物の高い価格に依存しなければならない。しかし高い価格が与えられているならば、地代は豊饒性に――稀少性ではなく――比例して高くなければならない。
 吾々は、一貨物の需要される分量以上のものを永久的に生産する必要はない。もし偶然にあるより[#「より」に傍点]大なる分量が生産されるならば、それはその自然価格以下に下落し、従って生産費――その原費には資本の通常利潤を含む――を支払わず、かくて供給は妨げられ、ついに供給は需要に一致し、そして市場価格は自然価格にまで騰貴するに至るのである。
 マルサス氏は、人口の一般的増加は、資本の増加、その結果たる労働に対する需要、及び労賃の騰貴によって、生ずるものであり、食物の生産は単にその需要の結果に過ぎない、とは考えずに、人口は単に以前からの食物の備えによってのみ増加され、――『それ自身に対する需要を創り出すものは食物である、』――結婚に対して奨励が与えられるのは、まず食物を備えることによってである、と考えるに、余りに心傾き過ぎているように、私には思われる。
 労働者の境遇が改善されるのは、彼らにより[#「より」に傍点]多くの貨幣を、またはそれで労賃が支払われかつその価値が下落しなかった所の何らかの他の貨物を、与えることによってである。人口の増加と食物の増加とは、一般に高い労賃の結果ではあるが、その必然的な結果ではないであろう。労働者に支払われる価値の増加の結果としてのその境遇の改善は、必ずしも、彼をして結婚せしめ、家族を支える費用を負担せしめるものではない、――彼は、おそらくたぶん、その騰貴せる労賃の一部分を、食物及び必要品を豊富に手に入れるために
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