がこの意味に用いられる場合には、地代の原因[#「原因」に傍点]とは呼ばれ得ない。『地代の直接的原因は明かに、粗生生産物が市場で売れる価格が生産費を越す超過である。』とは言われない、けだしその超過がそれ自身地代であるからである。地代をもってマルサス氏は、『全生産の価値の中《うち》、その種類の何たるかを問わずその土地の耕作に属するすべての出費――その中には、当該時の農業資本の日常かつ通常利潤率で測定された所の、投下資本の利潤が含まれる――が支払われた後に、土地の所有主に残る部分』と定義した。さてこの超過が売れる額が幾干であろうと、それは貨幣地代である。それはマルサス氏が、『粗生生産物が市場で売れる価格が生産費を越す超過』という語で意味している所のものである。従って生産費に比較して粗生生産物の価格を高めるべき原因の研究においては、吾々は、地代を高めるべき原因を研究しているのである。
(一四六)マルサス氏が挙げている地代の騰貴の第一原因、すなわち、『それによって、土地の上に用いられる人間の支持のために必要とされるよりもより[#「より」に傍点]多量の生活の必要品を、土壌が生産せしめられ得るという、土壌の性質』に関して彼は次の如き考察をなしている。『吾々はなお、何故《なにゆえ》に消費と供給とが価格をかくも著しく生産費を超過せしめる如きものであるか、ということを知ろうと欲するが、その主たる原因は明かに生活の必要品を生産するに当っての土壌の肥沃度[#「肥沃度」に傍点]である。この豊饒を減少し、土壌の肥沃度を減少せよ、しからばこの超過は減少するであろう。それを更に減少せよ、しからばそれは消失するであろう。』しかり、必要品の超過は減少し消失するであろう、しかしそれが問題であるのではない。問題はその生産費以上に出ずるその価格超過が減少し消失するか否か、ということである。けだし貨幣地代はこのこと如何《いかん》に依存するからである。マルサス氏は次の推論においても正鵠を得ているであろうか? すなわち分量の超過が減少し消失するであろうから、従って『生産費を超過する生活必要品の高い価格[#「高い価格」に傍点]の原因は、その稀少よりはむしろその豊富の中に、見出さるべきであり、そして、啻に人為的独占によって惹起された高い価格とは本質的に異るのみならず、更にまた、必然的独占物と呼ばれ得べき所の、食物に関係なき土地の特殊の生産物の高い価格とも本質的に異るものである』と。
 土地の肥沃度及びその生産物の豊饒が、生産費を越すその価格の超過の減少、――換言すれば地代の減少、を伴うことなくして減少するという、事情はないであろうか? もしかかる事情があるならば、マルサス氏の命題は余りにも一般的に過ぎる。けだし彼は、地代は土地の肥沃度の増加につれて騰貴し、その肥沃度の減少につれて下落するということを、すべての事情の下において真実な一般的原理なりと述べているように、私には思われるからである。
 もし、ある一定の農地について、土地が豊富に産出するに比例して、全生産物中のより[#「より」に傍点]大なる分量が地主に支払われるならば、マルサス氏は疑いもなく正しいであろう。しかしその反対が事実である。すなわち最も肥沃な土地のみが耕作されている時には、地主は全生産物の最小の比例と最小の価値とを受取り、そして全生産物に対する地主の分前も、彼れの受領する価値も、逓増的に増加するのは、より[#「より」に傍点]劣等な土地が、増加しつつある人口を養うために必要とされる時に限られるのである。
 穀物に対する需要は百万クヲタアであり、そしてそれは実際に耕作に引入れられている土地の生産物であると仮定しよう。そこで、すべての土地の肥沃度が、このまさに同じ土地が九〇〇、〇〇〇クヲタアしか産出しないほどに減じたと仮定しよう。需要は百万クヲタアであるから、穀価は騰貴し、優等地が引続き百万クヲタアを生産していた場合よりも速かに、劣等地に必然的に頼らなければならない。しかし、地代騰貴の原因であり、かつ地主の受取る穀物量が減少しても地代を引上げるものは、この劣等地を耕作するという必要である。地代は、記憶すべきであるが、耕作地の絶対的肥沃度には比例せず、その相対的肥沃度に比例するものである。資本をより[#「より」に傍点]劣等な土地に駆るすべての原因は、優等地に対する地代を引上げるに相違ない。けだし地代の原因は、マルサス氏によってその第三命題において述べられている如くに、『最も肥沃な土地の比較的稀少性』であるからである。穀価は当然その最終部分を生産する困難と共に騰貴し、そして一特定農場において生産される全分量は減少しても、その価値は増加するであろう。しかし、労賃と利潤との合計は引続き常に同一の価値を有つために(註一)より[#
前へ 次へ
全173ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
リカードウ デイヴィッド の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング