いるから、それが内国から奪い去るすべてのものを外国に与えない故にそれは最悪の課税である。かくて、もし穀物が英国では四|磅《ポンド》でありフランスでは三|磅《ポンド》一五シリングであるならば、一〇シリングの奨励金は、結局、それをフランスにおいて三|磅《ポンド》一〇シリングに下落せしめ、英国において四|磅《ポンド》なる同一価格に維持するであろう。輸出される毎クヲタアに対して英国は一〇シリング租税を支払う。フランスに輸入される毎クヲタアに対してフランスは単に五シリングを利得するに過ぎず、従って一クヲタアにつき五シリングの価値が、おそらく穀物ではなく何らかの他の必要品または享楽品の生産を減少せしめる如き資金の分配によって、絶対的に世界から失われるのである。
(一〇九)ビウキャナン氏は奨励金に関するスミス博士の議論の誤謬を認めたように思われ、私が引用した最後の章句について極めて思慮深く次の如く述べている。『自然は穀物に単にその貨幣価格を変動せしめることによっては変動せしめられ得ない真実の価値を刻印したと主張する場合、スミス博士はその使用価値をその交換価値と混同している。一ブッシェルの小麦は、豊富な時よりも稀少な時の方がより[#「より」に傍点]多数の奢侈品や便宜品と交換されるであろう。従って処分すべき食物の剰余を、穀物がより[#「より」に傍点]多量にある時よりも、より[#「より」に傍点]大なる価値の他の享楽品と交換するであろう。従ってもし奨励金は穀物の強制的輸出を惹起すとしても、それはまた真実の価格騰貴を惹起すことはないであろうと論ずるのは、無益である。』奨励金の問題のこの部分についてのビウキャナン氏の議論の全体は完全に明瞭でかつ十分であるように、私には思われる。
 しかしながら、ビウキャナン氏は思うに、スミス博士または『エディンバラ評論』の論者と同じく、労働の価格の騰貴が製造貨物に対して及ぼす影響について、正しい意見を有っていない。私が他の場所で述べた所の彼れの特殊な見解からして、彼は、労働の価格は穀物と何らの関聯も有たず、従って穀物の真実価値は労働の価格に影響せずに騰貴し得るしまた騰貴するであろう、と考えている。しかしもし労働が影響されるならば、彼は、アダム・スミス及び『エディンバラ評論』の論者とともに、製造貨物の価格もまた騰貴すると主張するであろう。そしてしかる時には、いかにして彼がかかる穀物の騰貴を貨幣価値の下落から区別し、またはいかにして彼がスミス博士の結論以外の何らかの他の結論に達し得るのであるかが、私には判らない。『諸国民の富』の第一巻二七六頁への一つの註の中においてビウキャナン氏は曰く、『しかし穀価は土地の粗生生産物のすべての他の部分の貨幣価格を左右しない。それは金属類の価格も石炭、木材、石材等の如き種々なる有用物の価格も左右しない。そしてそれは労働の価格を左右しないから、それは諸製造品の価格を左右しない[#「そしてそれは労働の価格を左右しないから、それは諸製造品の価格を左右しない」に傍点]。従って奨励金は、それが穀価を騰貴せしめる限りにおいて、疑いもなく農業者に対する真実の利益である。従ってこの根拠に立ってはその政策は論議さるべきではない。穀価を騰貴せしめることによる農業に対するその奨励は、認めなければならない。かくて問題は、農業はかくの如くして奨励さるべきであるか否か? ということになる。』――かくてそれはビウキャナン氏によれば、労働の価格を騰貴せしめないから、農業者に対する真実の利益である。しかしもしそれが騰貴せしめるならば、それはすべての物の価格をそれに比例して騰貴せしめるであろうが、しかる時には、それは農業に対して何らの特定の奨励を与えないであろう。
 しかしながら、何らかの貨物の輸出奨励金の傾向は、少しばかり貨幣価格を下落せしめるにあることを、認めなければならない。輸出を促進するものは何でも、一国に貨幣を蓄積する傾向があり、これに反して輸出を阻害するものは何でも、それを減少する傾向がある。課税の一般的影響は、課税貨物の価格を騰貴せしめることにより、輸出を減少し従って貨幣の流入を阻止する傾向があり、そして同一の原理によって奨励金は貨幣の流入を奨励するのである。このことは課税に対する一般的観察についてより[#「より」に傍点]十分に説明されてある。
 重商主義の有害な影響はスミス博士によって十分に暴露された。その主義の全目的は、貨物の価格を、外国の競争を禁止することによって内国市場において騰貴せしめることであった。しかしこの主義は、社会の他のいかなる部分よりも農業階級により[#「より」に傍点]有害であるわけではなかった。資本がしからざれば流入しなかった通路に強いて赴かしめることによって、それは生産される貨物の全量を減
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