設けた大きなかつ本質的な差異に留意しなかったであろう。上記の手段のいずれかによって、我が製造業がそれなくしてその財貨に対して取得し得たよりもややより[#「より」に傍点]高い価格で売り得た時には、啻にそれらの財貨の名目価格のみならずその真実価格も引上げられる。啻にそれらの製造業者の利潤、富及び収入が名目的に増加するのみならず真実にも増加する。――それらの製造業者は真実に奨励を受けるのである。しかし同様な施設によって、穀物の名目価格すなわち貨幣価格が引上げられる時には、その真実価格は引上げられず、我が農業者または田舎紳士の真実の富は増加せられず、穀物の栽培は奨励を受けない。事物の自然は穀物に、単にその貨幣価格を変動せしめることによっては変動せしめられ得ない一つの真実価値を刻印した。世界全体を通じて、その価値は、それが維持し得る労働量に等しいのである。』
 私は既に、穀物の市場価格は、奨励金の結果需要が増加した場合には、必要な附加的供給が得られるまではその自然価格を超過し、またその時に至ればそれは再びその自然価格に下落するということを、説明せんと試みた。しかし穀物の自然価格は貨物の自然価格の如くに固定してはいない。けだし穀物に対してある大きな需要の増加があれば、一定量を生産するにより[#「より」に傍点]多くの労働が必要とされる劣等な品質の土地が耕作されなければならず、従って穀物の自然価格は騰貴するからである。従って穀物の輸出に対する継続的奨励金によって穀価の永久的騰貴の傾向が造られるであろうが、それは、私が他の場所で説明した如くに(註)、必ず地代を騰貴せしめるものである。かくて田舎紳士は、穀物輸入禁止及びその輸出に対する奨励金に、啻に一時的のみならずまた永久的の利益を有っているが、しかし製造業者は、貨物の輸入に対する高関税及びその輸出に対する奨励金を設けることに、何らの永久的な利益も有たない。彼らの利益は全然一時的である。
[#ここから2字下げ]
(註)地代についての章を参照。
[#ここで字下げ終わり]
 製造品の輸出に対する奨励金は疑いもなく、スミス博士の主張する如くに、製造品の市場価格を騰貴せしめるであろうが、しかしそれはその自然価格を騰貴せしめはせぬであろう。二〇〇人の労働は、一〇〇人が以前に生産し得たこれらの財貨の二倍を生産するであろう。従って、必要な資本量が必要な製造品量を供給するに用いられる時は、それは再びその自然価格にまで下落し、そして高い市場価格から生ずるすべての利益はなくなるであろう。かくて製造業者が高い利潤を得るのは、単に貨物の市場価格の騰貴後附加的供給が得られるまでの中間期間に限る。けだし価格が低落するや否やその利潤は一般水準にまで下落するであろうからである。
 従って私は、田舎紳士は穀物の輸入を禁止することに、製造業者が製造財貨の輸入を禁止することに有っているほどの大きな利益を有つものではない、というスミスの意見には同意せずして、彼らは遥かに優れた利益を有つものであると主張する。けだし製造業者の利益は単に一時的に過ぎないが、彼らの利益は永久的であるからである。スミス博士は、自然は穀物とその他の財貨との間に一つの大きなかつ本質的な差異を設けたと述べているが、しかしその事情からの正当な推理は、彼がそれから引出しているものの正反対である。けだし地代が創造されかつ田舎紳士が穀物の自然価格の騰貴に利益を有つのは、この差違によるからである。スミス博士は、製造業者の利益を田舎紳士の利益と比較せずにそれをその地主の利益とは極めて異るところの農業者の利益と比較すべきであった。製造業者はその貨物の自然価格の騰貴には何らの利益をも有たず、農業者もまた穀物またはその他の粗生生産物の自然価格の騰貴に何らの利益も有たないが、もっとも両階級はその生産物の市場価格が自然価格を超過している間は利益を受けるのである。これに反して地主は穀物の自然価格の騰貴に最も決定的な利益を有っている。けだし地代の騰貴は粗生生産物の生産の困難の不可避的結果であり、それなくしてはその自然価格は騰貴し得ないからである。さて穀物の輸出に対する奨励金と輸入の禁止とは需要を増加しそして吾々をしてより[#「より」に傍点]貧弱な土地の耕作をせしめるから、それは必然的に生産の困難の増加を惹起すのである。
 製造品または穀物の輸入に対する高い関税またはその輸出に対する奨励金の唯一の影響は、資本の一部分を、それを求めるのが当然ではない用途に移転せしめることである。それは社会の一般資金の有害な分配を惹起す、――それは製造業者をして比較的により[#「より」に傍点]不利な職業を開始せしめまたは継続せしめる。損失額は一般資本のより[#「より」に傍点]不利な分配によって埋合《うめあわ》されて
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