より[#「より」に傍点]十分にかつ見事に説明した論者はない。第一篇、第十五章を見よ。
[#ここで字下げ終わり]
 生産物は常に生産物または勤労によって購買され、貨幣は単に交換が行われる媒介物に過ぎない。ある特定貨物が余りに生産され過ぎて、それに投ぜられた資本を償い得ないようなその供給過剰が市場に起り得よう。しかしすべての貨物に関してはかかることは起り得ない。穀物に対する需要はそれを食うべき口の数によって限定され、靴や上衣に対する需要はそれを着用する人の数によって限定される。しかし社会がまたは社会の一部分が、自ら消費し得または自ら消費せんと欲する程度の穀物量及び帽子や靴の数を有つことは有り得ても、自然または人為によって生産されるあらゆる貨物については同一のことは言い得ない。ある人々はもし葡萄酒を手に入れる資力があるならばそれをより[#「より」に傍点]多く消費するであろう。十分の葡萄酒を有っている他の人々は、その什器の分量を増加しまたはその品質を改善せんことを希望するであろう。他の人々は、その土地を飾り、またはその家屋を大きくしようと希望するであろう。これらのことの全部または一部をなしたいとの願望はあらゆる人の胸に植え付けられている。必要とされているのはその能力のみであり、そして生産の増加以外にはこの能力を与え得ない。もし私が自由に処分し得る食物及び必要品を有っているならば、私はまもなく、私に最も有用なまたは最も望ましい物の若干を所有せしめる労働者を手に入れることであろう。
 かかる生産物の増加及びこれに伴って惹起される需要が利潤を下落せしめるか否かは、もっぱら労賃の騰貴に依存する。そして労賃の騰貴はある限られた期間を除けば、労働者の食物その他の必要品を生産する難易に依存する。私はある限られた期間を除けばと言うが、それはけだし、労働者の供給は、常に終局的には、彼らを支持する手段に比例するということよりもより[#「より」に傍点]十分に樹立された点はないからである。
 食物の価格が低い場合の資本の蓄積が利潤の下落を伴い得る唯一の場合があるが、それは一時的であろう。そしてそれは労働の維持のための基金が人口よりも極めてより[#「より」に傍点]速かに増加する場合である。――その時には労賃は高く利潤は低いであろう。もしあらゆる人が奢侈品の使用を止め、蓄積のみを心がけるならば、直接的消費物たり得ない多量の必要品が生産されるであろう。数において極めて限定されている貨物についてすら疑いもなく普遍的供給過剰が起り得、従ってかかる貨物の追加量に対する需要も有り得ず、またより[#「より」に傍点]以上の資本の使用に対する利潤も有り得ないであろう。もし人々が消費することを止めるとすれば、彼らは生産することを止めるであろう。このことの承認は一般的原理を疑うゆえんではない。例えば英国の如き国においては、国の全資本及び労働を必要品のみの生産に向けようとする志向が起り得ると想像することは困難である。
(一〇一)商人がその資本を外国貿易や運送業に用いるのは、常に選択の結果であって、止むを得ずなすのではない。すなわち、それは彼らの利潤が、内国商業よりもこの事業の方が幾分多いからである。
 アダム・スミスは正当にも曰く、『食物に対する欲望は、あらゆる人間において、人類の胃の狭い受容力によって限定されているが、しかし建物や衣服や馬車や家具の如き便利品及び装飾品に対する欲望は、限度または一定の境界を有たないように思われる。』かくて自然はいかなる時にも農業に有利に用いられ得る資本額を必然的に限定したが、しかしそれは生活の『便利品及び装飾品』を獲得する上に用いられ得る資本額には、何らの制限も置かなかったのである。これらの満足を最も豊富に得ることが当面の目的であり、そして人々が、必要とする貨物やその代用品を国内において製造せずして外国貿易や運送業に従事するのは、それがこの目的をより[#「より」に傍点]よく成就するからである。しかしながら、もし特殊な事情によって、資本を外国貿易や運送業に用いることを阻まれるならば、吾々は、その利益は減少しても、その資本を国内で用いるであろう。そして『建物や衣服や馬車や家具の如き便利品、装飾品』に対する欲望に何らの限度もない間は、それを生産すべき労働者を維持すべき吾々の力を束縛するものを除けば、その獲得に用いらるべき資本には何らの限界も有り得ないのである。
 しかしながら、アダム・スミスは、運送業を論じて選択的のものではなく止むを得ないものであるとし、あたかもそれに用いられている資本は、それに用いられない場合には、無能力になるかの如くに、あたかも内国商業における資本は、量を限定されない場合には、流出し得るかの如くに、論じている。彼は曰く、『ある国の資本
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