のである。
(一〇〇)消費または売却せんとする目的なくして生産するものはない。そして直接彼に有用でありまたは将来の生産に寄与し得るある他の貨物を購買せんとする意図なくしては、人は決して売却しない。しからば、彼は、生産することによって、必然的に、彼自身の財貨の消費者となるか、またはある他人の財貨を、購買し消費するものとなるかである。他の財貨を所有するという彼れの目的を達するために、彼が最も有利に生産し得る貨物について、長い間十分の知識を有っていないということは、想像し得ない。従ってそれに対して需要の無い貨物を彼が引続き生産することはおそらくないであろう(註)。
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(註)アダム・スミスはオランダを論じて、資本の蓄積とその結果あらゆる資本を有ち過ぎることによる利潤下落の一例を与えるものとしている。『そこでは政府は二%で借り、信用多き私人は三%で借りる。』しかしオランダは、それが消費するほとんどすべての穀物を輸入せざるを得ず、そして労働者の必要品に重税を課することによってこの国は労働の労賃を更に騰貴せしめた、ということを記憶しなければならない。かかる事実は、オランダにおける利潤率の低いことを十分に説明するであろう。
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しからば、必要品騰貴の結果として、蓄積に対する動機がなくなるほど労働が騰貴し従って資本の利潤が極めてわずかしか残らないようになるまでは、生産的に使用され得ないほどの資本額が一国において蓄積されることは有り得ない(註一)。資本の利潤が高い間は、人は蓄積せんとする動機を有つであろう。人が満足されぬ熱望を有つ間は、彼はより[#「より」に傍点]多くの貨物に対して需要を有つであろう、そして彼がそれと引換に提供すべき何らかの新しい価値を有っている間は、それは有効需要であろう。もし年々一〇〇、〇〇〇|磅《ポンド》を得ている人に一〇、〇〇〇|磅《ポンド》が与えられるならば、それを金庫に蔵《しま》わずに、彼は、一〇、〇〇〇|磅《ポンド》だけその支出を増加するか、それを自分自身で生産的に用いるか、または同じ目的のためにそれを他人に貸付けるであろう。そのいずれの場合においても、需要は異る物に向けられるけれども、需要は増加するであろう。もし彼が支出を増加するならば、その有効需要はおそらく、建物、什器、またはこれに類する享楽品に向うであろう。もし彼が一〇、〇〇〇|磅《ポンド》を生産的に用いるならば、その有効需要は、新しい労働者を働かしむべき食物、衣服、及び粗生原料品に向うであろうが、しかしそれも依然として需要である(註二)。
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(註一)次の語はセイ氏の原理と全く一致するであろうか? ――『自由にし得る資本が、それに対する用途の範囲に比較して豊富であればあるほど、資本の貸付に対する利子率は下落するであろう。』――第二巻、一〇八頁。もし資本がいかなる範囲にまでも一国によって用いられ得るならば、それに対する用途の範囲に比較してそれが豊富であるとは、どうして言われ得よう?
(註二)アダム・スミスは曰く、『ある特定産業部門の生産物が、その国の需要が必要とする所を超過するならば、剰余は海外に送られ、国内において需要のある何らかの物と交換されなければならない。かかる輸出なくしては[#「かかる輸出なくしては」に傍点]、その国の生産的労働の一部分は停止しなければならず[#「その国の生産的労働の一部分は停止しなければならず」に傍点]、そしてその年々の生産物の価値は減少しなければならない[#「そしてその年々の生産物の価値は減少しなければならない」に傍点]。大英国の土地及び労働は、内国市場の需要が必要とする以上穀物や羊毛や鉄器を一般に生産する。従ってそれらの物の剰余部分は海外に送られ、そして国内において需要のある所の何らかの物と交換されなければならない。この剰余が、それを生産する労働と費用とを償うに足る価値を獲得し得るのは、かかる輸出の手段によってのみである。』人は上記の章句からして、アダム・スミスは、吾々は穀物や羊毛品や鉄器の剰余を生産しなければならぬのであり、そしてそれを生産する資本はそれ以外には用いられ得ないと結論したものと、考えるに至るかもしれない。しかしながら、資本がいかに使用されるかは常に選択の問題であり、従って、長い間に亘っては、ある貨物の剰余は決してあり得ない。けだしもしそれがあるならば、それはその自然価格以下に下落し、そして資本はより[#「より」に傍点]有利な職業に移転されるからである。生産された財貨が、その価格によってはその生産費と市場への運送費との全部――通常利潤を含む――を償わない所の職業から、移転せんとする資本の傾向を、スミス博士よりも
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