には何らの変動も起らないであろう。吾々は、一貨物を、課税後も以前と同様に容易に輸出することが出来、また輸入に何らの特殊の便宜も与えられないから、貴金属が以前よりもより[#「より」に傍点]以上に輸出貨物表に入り込むことはないであろう。
 すべての貨物の中、自然または技術の援助によって、特殊の便宜をもって生産されるものほど、課税に適当するものはおそらくないであろう。諸外国についていえば、かかる貨物は、その価格が投下労働量によって左右されずに、むしろ購買者の気紛れ、趣味、及び資力によって左右されるものの、種目の下に分類され得よう。もし英国が他国よりもより[#「より」に傍点]生産的な錫鉱を有ち、または優秀な機械及び燃料のため、綿製品の製造の特殊の便宜を有つとしても、錫及び綿製品の価格は、英国において、依然としてそれを生産するに必要な労働及び資本の比較的分量によって左右され、そして我国の商人の競争は、外国消費者に対してそれをほとんどより[#「より」に傍点]高価にしないであろう。これらの貨物の生産上での我国の利益は極めて決定的であるから、おそらくそれらの物は外国市場において、その消費を著しく減少せしめずに極めて著しい附加価値を有つであろう。これらの物は、国内において競争が自由である間は、その輸出に対する租税以外のいかなる他の手段によってもこの価格に達することを得ないであろう。この租税は全然外国の消費者の負担する所となり、そして英国政府の経費の一部分は、他国の土地及び労働に対する租税によって支弁されるであろう。現在英国民によって支払われ、そして英国政府の経費の補助に寄与している茶税は、もしそれが支那において茶の輸出に対して課せられるならば、支那政府の経費の支払に流用され得よう。
 奢侈品に対する租税は、必要品に対する租税に比してある利益を有っている。それは一般に所得から支払われ、従って国の生産的資本を減少しない。もし葡萄酒が課税の結果として価格が大いに騰貴するならば、おそらくそれを購買し得るためにその資本に対し重大な侵害を加えるよりも、むしろ葡萄酒の飲用を止めるであろう。それは極めて価格と一致しているから、納税者は租税を支払っていることをほとんど自覚しない。しかしそれはその短所を有っている。第一にそれは決して資本には及ぼされ得ない、しかも若干の異常の場合には、資本さえも公共の緊急に寄与することが得策とされることがあり得よう。そして第二にこの租税は所得にさえも及ぼされ得ないであろうから、租税の額に関しての確実性がない。貯蓄を企てている人は、葡萄酒の飲用を止めて、葡萄酒に対する租税を免れるであろう。国の所得は減少されず、しかも国家は租税によって一シリングをも徴収し得ないであろう。
 習慣によってその使用が愉楽となったものはいかなるものでも、これを放棄することは困難であり、そして極めて重い租税にもかかわらず引続き消費されるであろう。しかし、この放棄の困難にはその限界があり、そして経験は日々に課税の名目額の増加がしばしば徴税額を減少せしめることを説明している。ある人は、同一量の葡萄酒を、一本の価格が三シリング騰貴しても引続き飲用するであろうが、しかし彼は四シリングの騰貴額を支払うよりはむしろ葡萄酒の使用を中止するであろう。他の一人は甘んじて四シリングを支払うであろうが、しかし五シリングを支払うことは拒絶するであろう。同一のことは、奢侈品に対する他の租税について言い得よう。すなわち多くの者は一頭の馬が与えられる享楽に対して五|磅《ポンド》の租税を支払うであろうが、しかし一〇|磅《ポンド》または二〇|磅《ポンド》は支払おうとはしないであろう。彼らが葡萄酒や馬の使用を止めるのは、彼らがより[#「より」に傍点]多くを支払い得ないからではなくより[#「より」に傍点]多くを支払いたくないからである。あらゆる人は心の中にその享楽の価値を測定するある標準を有っているが、しかしその標準は人間の性格と同様に各種各様である。多額の国債従ってまた莫大の租税を課すという有害な政策のためにその財政状態が極度に人為的となっている国は、この租税引上方法に伴う不便に特に曝されている。租税を携えて全奢侈品を一巡した後に、馬や馬車や葡萄酒や僕婢やその他すべての富者の享楽品に課税した後に、大臣は、『すべての財政計画の中で最上のものは少く支出することであり、そしてすべての租税の中で最良のものは額が最少のものである』というセイ氏の金言を無視して、所得税や財産税というが如きより[#「より」に傍点]直接的な租税に頼る気になるのである。
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    第十七章 粗生生産物以外の貨物に対する租税

(八六)穀物に対する租税が穀物の価格を騰貴せしめると同一の原則によって、ある他の貨物に対す
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