ウれずに、必要品の価格が永久的に騰貴することはないということを、異論のないことと認め得よう。
 もし、それに労働の労賃が費される所の、食物以外の他の必要品の価格に、騰貴が起ったとすれば、利潤の上に生み出される影響は、同一であるかまたはほとんど同一であったであろう。かかる必要品に対し騰貴せる価格を支払わねばならぬという労働者の必要は、彼をしてより[#「より」に傍点]多くの労賃を要求するを余儀なからしめるであろう。そして労賃を騰貴せしめるものはいかなるものも必然的に利潤を低減する。しかし、労働者が必要としない所の絹や天鵞絨《ビロード》や什器やその他の貨物が、それにより[#「より」に傍点]多くの労働が投ぜられる結果騰貴すると仮定すれば、このことは利潤に影響を及ぼさないであろうか? 確かに及ぼさない。けだし労賃の騰貴以外に何物も利潤に影響を及ぼし得ないが、絹や天鵞絨《ビロード》は労働者によって消費されず、従って労賃を騰貴せしめ得ないからである。
 私は利潤に関し一般的に論じているのであることを了解してもらいたい。私は既に、貨物の市場価格は、その貨物に対する新しい需要が要求するよりもより[#「より」に傍点]少い分量において生産されることがあろうから、その自然価格または必要価格を超過することがあろう、と述べた、しかしながら、このことは単に一時的結果に過ぎない。その貨物の生産に用いられる資本に対する高い利潤は当然に資本をその事業に吸引するであろう。そして必要な資金が供給され、かつその貨物の分量が適当に増加されるや否や、その価格は下落し、そしてその事業の利潤は一般水準に一致するであろう。一般利潤率の下落は、特定職業の利潤の部分的騰貴と決して両立し得ないものではない。資本が一職業から他の職業に移転されるのは、利潤の不平等によってである。かくて、一般利潤が、労賃の騰貴と増加しつつある人口に必要品を供給する困難の増加との結果として、下落しつつあり、そして徐々により[#「より」に傍点]低い水準に落着きつつある間は、農業者の利潤は、ある短い時期の間、前の水準以上にあり得よう。外国貿易及び植民地貿易の特定の部門にもまた、ある時期の間、異常の奨励が与えられ得よう。しかしこの事実の認容は決して、利潤は労賃の高低に依存し、労賃は必要品の価格に、そして必要品の価格は主として食物の価格に依存する――けだ
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