ニ務に三、〇〇〇|磅《ポンド》を使用していたとすれば、彼は、労賃の騰貴の結果、同一の業務を営んで行くことが出来るためには、その資本を増加するを余儀なくされるであろう。もし彼れの貨物が以前には七二〇|磅《ポンド》で売れたとすれば、それは引続き同一の価格で売れるであろうが、しかし以前には二四〇|磅《ポンド》であった労働の労賃は、穀物が五|磅《ポンド》二シリング一〇ペンスの時には二七四|磅《ポンド》五シリングに騰貴するであろう。第一の場合には、彼は、三〇〇〇|磅《ポンド》に対する利潤として四八〇|磅《ポンド》の残額を得るであろうが、第二の場合には、彼は、増加された資本に対し単に四四五|磅《ポンド》一五シリングの利潤を得るに過ぎず、従って彼れの利潤は、農業者の変更された利潤率に一致するであろう。
 粗生生産物の騰貴によってその価格が多かれ少かれ影響を蒙らない貨物はほとんどない、けだし土地からのある粗生原料品が大部分の貨物の構成に入り込むからである。綿製品や亜麻布や毛織布は、すべて小麦の騰貴と共に価格において騰貴するであろう。しかしそれらが騰貴したのは、それでそれらの物が作られる粗生原料品により[#「より」に傍点]多くの労働量が投ぜられたためであって、製造業者がこれらの貨物の製造に用いた労働者に対して彼がより[#「より」に傍点]多くを支払ったためではない。
 あらゆる場合において、貨物が騰貴するのはそれにより[#「より」に傍点]多くの労働が投ぜられるからであって、それに投ぜられる労働がより[#「より」に傍点]高い価値にあるからではない。宝石や鉄や銀や銅の品物は、地表から得られる粗生生産物が何らその構成に入り込まないから騰貴しないであろう。
(四三)私は貨幣労賃は粗生生産物の価格の騰貴と共に騰貴すべきことを異論のないことと認めているが、しかし、労働者はより[#「より」に傍点]少い享楽物で満足するかもしれないから、これは決して必然的帰結ではない、と言われるかもしれない。なるほど労賃は以前には高い水準にあったが、それは若干の低減に耐えることもあろう。もしそうであるならば利潤の下落は妨げられるであろう。しかし必要品の価格が徐々と騰貴しているのに労賃の貨幣価格は下落しまたは静止している、と考えることは不可能である。従って通常の事情の下においては、労賃の騰貴を惹起さずに、またはそれに先行
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