の量子力學の發見が或は多少遲れたかも知れない.然し又一旦之が發見せられると其進展の驚くべく迅速であつたのは,古典論の適用によつて嘗めさせられた經驗の苦さ,及び前述の通り古典量子論によつて形成せられた正しい背景が與つて力あつたと思へば,これも結局は幸であつたといふべきであらう.殊に何の手掛りもなくては量子力學も發見が困難であつたらうから,つまり今日の量子論は行くべき道を進んだと考ふべきである.
*[#「*」は上付き小文字](A)原子内の電子の運動状態は,或る條件で規定せられる所謂定常状態のみが許される.そして此状態は不思議な安定度を有つて居つて,電子が其運動状態を變へる場合には,必ず一つの定常状態から他のものに移り,如何なる作用があつても其中間の状態にはあり得ない.
(B)一つの定常状態から他の定常状態に移る場合には,次の式で與へられる振動數νをもつ電磁波を輻射又は吸收する
[#天から15字下げ]hν=E'−E''
但し E',E'' はそれぞれ初めと終りとの定常状態に於ける原子のエネルギーで,h は Planck の常數である.
§4. Bohr の理論物理學研究所.
1913年の夏 B
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