に示してゐる.その同じ科學が使ひ方によつては平和國家の建設に不可缺の要因であることは前述の通りである.要はこれを如何に使用するかといふことであつて,それは使用する人の態度で定まる問題である.
我が國は最近發表せられた改正憲法の草案にも見られる通り,國家として戰爭を否定しこれを抛棄することを決意し,マ司令部もこれに滿足の意を表してゐるのである.これは正に太平洋戰爭で得られた最大の收穫といはねばならぬ.このことはポツダム宣言受諾の當然の歸結であるが,更に現實の問題として日本は戰爭をする能力がない.即ち何はさて措き原子時代を支配すべき原子爆彈を1個も作り得ないのである.何となれば聯合國より禁止せられてゐるのは勿論のことであるが,その必要もなく地質學者及び鑛物學者のいふ所によれば,日本には必要量のウランは産出しない.又たとへウランがあつたとしても,我が國の技術・經濟が原子爆彈製造の能力をもつやうになる見込みは,到底ないからである.
從つて戰爭が始まれば,日本はそば杖をくつて原子爆彈の慘害を被る以外には何の收得もない.憲法に戰爭抛棄を制定せんとするのは,人道上は勿論のこと,利害關係からも當然
前へ
次へ
全19ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
仁科 芳雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング