のことといはねばならぬ.萬世太平の國是をとつてゐる日本にとつて,科學の興隆は民生に生活の安定を得せしめ,世界平和に貢獻せしむる大きな力を與へる以外の何物でもない.これは平和を好愛するアメリカに於て,科學が如何に物心兩面の文化建設に役立つてゐるかを見れば,思ひ半ばに過ぐるものがあらう.それ故日本に科學を否定することは即ち七千數百万萬の人間を貧困と混亂と惡徳との淵に沈淪せしむることになる.これは日本國民にとつて不幸であるのみならず,世界人類發達の障碍となるものとして避くべきことといはねばならぬ.この見地よりして自分は日本科學の振興に對し,聯合國が特に考慮を拂はれんことを冀ふものである.
3.科學の再建
我が國の科學は支那事變まではその發達目覺しいものがあつたのであるが,それより次第に下り坂となり太平洋戰爭となるに及んで益々進歩を阻まれ,その末期に於ては空襲により痛められ,終戰後は科學者の生活の不安と,戰災復舊の困難と,資材入手の不能とにより,その機能を殆んど停止してしまつた.
科學は眞に救國の具であるが,前述のやうに産業に劃期的革新を齎すことは,現實の問題として遠き
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