かねばならぬ.これがためには凡ゆる部門の科學者は互ひに密接な連絡の下にそれぞれの分野の研究を從來よりも一層深く掘り下げると共に,かくして得られた結果を實地に應用すべき研究者に協力して,基礎研究より始まり應用研究を經て更に生産に至る迄の,一貫した操作が逞しく推進せられるやうにする必要がある.
かやうにして一つでも劃期的な進歩がある部門に齎されれば,その結果が原因となつて更に他の分野に多大の影響を生むことになるのである.こんな基礎的な革命が幾つかの部門に起れば,それで日本産業の再建は行はれ生産は回復し經濟は安定し,延いては道義の昂揚も望み得るであらう.但しこれには相當の年月を要する.
以上によつて科學が如何に日本の再建に必要なものであるかが想像せられるであらう.然るにある論著は日本に科學を榮えしむることは,即ち戰爭を起す能力を與へるものであるから,その發達をできるだけ抑壓すべきであるといふ.これは杞憂以外の何物でもない.勿論かやうな考へ方は日本の現状を猜疑の目を以て見る者にとつてはあり得ることである.科學は使ひ方によつては戰爭遂行に最も有用な武器である.それは原子爆彈やレーダーが具體的
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