スのは日本のことであった.日本から持って歸られたものを一々示しながら,宏壯な邸宅のうちを案内して頂いた.
この邸宅は Carlsberg というビール釀造所の構内にある.この釀造所が會社であった頃,その社長の Jacobsen という人が立派な建物をたて,これを國家に提供して,一代の碩學に住んで貰うようにしたもので,1萬坪に近い廣い庭園が附いており,家には大理石の彫刻の列んだホールや温室があり,立派な部屋が澤山ある.この邸宅に最初に住んだのは哲學者 〔Ho'fding〕 で,この人が亡くなってから,Bohr さんの家族が住まれたのである.
その晩の話は主として日本の復興状態,又自分がどんな目的を持って科學研究所を經營しているのかということを話した.即ち經濟復興に科學を利用するということである.四つの島に8,000萬の人を入れて,どうして食ってゆくかが大きな問題であるということを話した.
翌日は Bohr さんの研究所を見に出かけた.全く見違えるほど大きくなっている.新しい4階建の建物ができたばかりであるし,またサイクトロン專用の建物も建築中である.Koch,Jacobsen の兩人
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