活状態に傾くものなり。然れども大隈伯は其の未来の短かきを感ずるに由りて、却つて一層猛烈なる現在主義の信者と為り、勉めて其生涯をして掉尾の活動あらしめ、以て賑やかなる晩年を送らむと欲せり。故に伯の性格は、老て益々発揮し、他の元老政治家が、或は客を謝して隠棲し、或は美田を買ふて子孫の計を為すの際に在りて、伯は其の門戸を開放して、社会の各階級と盛むに自由交通を行ひ、財を吝まず、労を厭はずして、八面応酬の活動を継続せり。見よ伯の門前は日々殆ど市を為すに非ずや。何時にても三十人以上を饗するの食膳は準備しつゝありといふに非ずや。其毎年議会開会前後に於ける憲政本党員の饗応のみにても、外務大臣の夜会に劣らざる莫大の費用を抛つ上に、或は観菊の会といひ、或は早稲田大学の卒業式といひ、或は遭難紀念会といひ、孰れも毎年一定の期節に於て貴顕紳士を早稲田の庭園に招待するの慣例なれば、其の費用は亦少なからざるべし。此頃全国商業会議所聯合会の開会したるを機とし、盛宴を張て其の議員を饗応したる如き、亦甚だ勉めたりと謂ふ可し。或る好事者流あり、伯の生活の贅沢なる殆んど王侯を凌ぐの勢あるを見て、窃に財源を探究したるに、伯は
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