し、或は侯を以て英国の名相ロペルトピールに比するものあり※[#白ゴマ、1−3−29]或は侯の内閣開放は、恰も徳川慶喜の政権奉還に似たる千古の快事なりといふものあり※[#白ゴマ、1−3−29]中には其挙動の意表なるに驚きて、反つて侯の心事を疑ふもの亦之れなきに非ず※[#白ゴマ、1−3−29]既にして侯は遽かに遊清の挙あり、詩人及び記室を携へ、軽装飄然として西行するや、世間復た侯の未来をいふもの紛々として起る※[#白ゴマ、1−3−29]或は曰く、是れ侯が永訣を政界に告げて老後の風月を楽むなりと※[#白ゴマ、1−3−29]或は曰く、是れ巻土重来の隠謀を蓄へ、暫らく韜晦して風雲を待つなりと※[#白ゴマ、1−3−29]或は曰く、是れ大隈板垣の両伯をして苦がき経験を甞めしむる為なりと※[#白ゴマ、1−3−29]されど余を以て侯を視るに、侯の退隠は、旧勢力と分離して、将に来らむとする新勢力と統合せむが為めのみ※[#白ゴマ、1−3−29]侯は善く此の過渡の時局を処したるのみ※[#白ゴマ、1−3−29]豈他あらむや。
 旧勢力とは何ぞや、藩閥是れなり※[#白ゴマ、1−3−29]新勢力とは何ぞや、政党是れ
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