実上藩閥の勢力を削小するの結果を生ずるを以て、最も藩閥者流の感情を刺戟したりしは自然の勢なるべし。然れども 皇上は憲法調査の全権と共に、憲法実施に関する凖備をも挙げて之れを公の自由手腕に委任せられたりき。是れ改革の容易に行はれたる所以なり。且つ憲法実施の準備整頓するや、公は自ら新官制に基きたる内閣の総理大臣と為りて、各行政機関の運用を試みたりき。是れ将に来らむとする議会に対せむが為に、政府の立憲的動作を訓練するに外ならざりき。斯くの如く公は一身を立憲政治の創設に捧げて其の能事を尽くしたれば、憲法の効果を収むるに就いても、亦無限の責任あるを感ずるは当然なり。
初め欧洲に於ては、日本の果して憲法政治に成功するや否やを疑ふの学者少なからざりしが、顧みて憲法実施後の経過を見れば、政府と議会との行動に於て大に非難すべき点なきに非ずと雖も、全体の成績よりいへば、何人も憲法の効果に対して疑惑を挟むものあるべからず。但だ公は憲法と一身同体の関係あるを自信して、憲法実施以来、其の朝に在ると野に在るとを問はず、絶えず其効果の如何を監視して、立憲政治の健全なる発達を助けむとするものゝ如し。曾て屡々議会に現
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