、二年の歳月を海外に費し、一面に於ては自ら専門の国学者を相手とし、心血を竭くして古今の沿革を講究したり。当時憲法を私議するもの、大抵其の範を民政主義の立憲制に採らむとするに傾き、之れに反して民政主義を悦ばざるものは、動もすれば極端なる神権政治を主張して、立憲政治を否認するの論結に帰著し、共に皇謨の大精神と相距る甚だ遠かりき。而も公は政治家たるの識見と立法家たるの才智とを兼備するの資を以て、純然たる君主的立憲制の日本の国性に適合するを確信し、且つ之れを確立するに於て周到なる意匠と慎重なる考慮を凝らし、以て遂に千古不磨の大典を立案するを得たり。
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 斯くて憲法を発布せられたりと雖も、之れを実施するに方りては、先づ行政各部の機関をして立憲的動作を為さしむるに適当なる諸般の改革を行はざるべからず、否らざれば未だ立憲政治の創設を完成したりと謂ふを得ざればなり。而して此の改革は政府の組織を根本より変更するものなるが故に、其の影響の及ぶ所は極めて広汎にして、直接に之れが打撃を受くるものは政府部内の藩閥者流なり。例へば会計法の如き、文官任用令の如きは、事
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