からず※[#白ゴマ、1−3−29]伯や固より清貧を装ふの偽善家を学ぶ能はずと雖も、其の决して黄金崇拝の宗徒たらざるは、伯が親近するものゝ反つて廉潔の士多きを以て之れを知る可し。
 伊藤侯は信仰を有せず※[#白ゴマ、1−3−29]若し之れありとせば唯だ運命に対する信仰あるのみ※[#白ゴマ、1−3−29]故に侯は屡々高島嘉右衛門をして自家の吉凶を卜せしむ※[#白ゴマ、1−3−29]大隈伯は宗教信者に非ず※[#白ゴマ、1−3−29]然れども一種敬虔の情凛乎として眉目の間に閃くは以て伯が運命の外別に自ら立つ所あるを見るに足る※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し伊藤侯の屡々失敗して毎に之れが犠牲と為らざるは殆ど人生の奇蹟にして、大隈伯の屡々失敗して飽くまで其の自信を枉げざるは猶ほ献身的宗教家の如し※[#白ゴマ、1−3−29]故に伊藤侯は得意の日に驕色あり※[#白ゴマ、1−3−29]大隈伯は得失を以て喜憂せず。伊藤侯は英雄を尚び、大隈伯は功業を尚ぶ※[#白ゴマ、1−3−29]夫れ英雄を尚ぶものは人の又己れを英雄視せんことを求む、故に伊藤侯は外に向て英雄らしき詩を作り※[#白ゴマ、1−3−29]内に向て
前へ 次へ
全350ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング