非ず。侯は首相独裁の内閣を理想とすといふ。是れ大に可なり。宜しく此の理想を実行して新内閣の統一を謀り、各大臣をして悉く侯の手足たらしむべきのみ。是れ曾てビスマークの実行したる理想にして、独逸の内閣制は実に此の理想を基礎としたるものなり。されどビスマーク死するや、独逸復た之れに次ぐの実力ある政治家なく、随つて首相独裁の内閣制は、事実に於て空名に帰したりき。伊藤侯にして果して之れを実行し得るの実力あるに於ては、内閣の威信を立て、行政の紀律を振粛する亦易々の業のみ。余は政党の矯正よりも先づ此の理想の実行を以て侯に望まざるを得ず。
顧ふに侯は先づ十分政友会を訓練し、然る後、内閣を組織して其の理想を実行せむと期したるものゝ如し。されど山県内閣は、侯の成算未だ熟せざるに早くも総辞職の挙に出でたり。侯の狼狽想像するに余りありと雖も、侯にして苟くも既に自ら起ちたる以上は、唯だ勇往邁進して其の理想を実行するを期す可きのみ。又何ぞ成算の未熟を以て念とすべけんや。
(下)新内閣の人物
伊藤侯の最初の内閣役割案には、政友会以外に於て井上伯及び伊東男の二人を算入したりしは殆ど疑ふ可からず。但し
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