見るに於て、侯たるもの亦大に奮ふ所なかる可からず。何故に今日を以て侯の実力を試験するに最も適当なる時代なりといふや。曰く侯にして若し其の理想を新内閣の上に行ふこと能はずして、之れをして見苦るしき失敗を取るが如きことあらしめば、其の結果として畏る可き保守的反動を惹き起すことなきを保す可からざればなり。此の点よりいへば、侯は実に憲政の安危に負ふ所の責任甚だ大なりといふ可し。
 悪口に長ずる批評家は、侯を目して観兵式の大将なりといへり。是れ侯が無事の日に壮言大語すれども、一たび難局に逢へば、心手忽ち萎縮して自己の責任を※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1−92−56]がるゝ迹あるを以てなり。侯の政友会を創立するや、其堂々たる宣言実に人聴を聳かすに足る者あり。而も之を実行するは談決して容易ならず。所謂る政党の弊害を矯正すといふ如きも、先づ内閣の威信を立て、行政の紀律を振粛するに非ずむば、政党の弊害を矯正すこと頗る難事に属せり。例へば政党の行政権に干渉するの行動あるは、内閣に之を排除するの威信なきが為にして、苟も内閣自ら憲法上の権域を正うして政党に臨まば、政党漫りに自ら行政権に干渉し得可きに
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