どいふ連中は、歴史的豪傑としては残つて居ないが、児童走卒も尚ほ能く其の名を記憶して嘖々是れを伝唱するのを思へば、彼等は正さしく口碑的豪傑の尤なるものである。
※[#丸中黒、1−3−26]日本に講談師とか浪花節語りとかいふ芸人の起つたのは、恐らくは口碑的豪傑の多く輩出した為であらふと考へる。而して此等の芸人に依て、口碑的豪傑が益々市井の間に持て囃さるゝやうになつたのである。
※[#丸中黒、1−3−26]田中正造翁は随分新聞紙の種を供給する人物であるが、歴史家からは多分淘汰されて仕舞ふだらうと思ふ。然しながら翁は歴史家に無視せらるゝと同時に、必らず講談師や浪花節語りに拾ひ上げられて、寄席の高座から口碑的豪傑となつて現はるゝの時があるに相違ない。
※[#丸中黒、1−3−26]翁は一度は代議士ともなつて、議会でも名物の一人に数へられた男であるが、翁は恰も日蓮宗徒が南無妙法蓮華経を一心に唱ふるやうに、始終唯だ鉱毒問題を怒鳴り通して居たのである。
※[#丸中黒、1−3−26]近頃翁は官吏侮辱罪で訴へられて居る。相手は巡査とか村長とかであるが、相手は誰れであらうとも、鉱毒地の人民を迫害すると
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